茶信

拙宅にて:2003(平成15)9月

 猛暑の中、連れは相変わらずのゴルフ三昧、当方は整理の傍ら、茶信を納めた箱を紐解いてみた。懐かしく皆様の文字をたどる。茶事に招かれるごと届く、師や先輩の筆に倣い、幾度も書をしたためた往時がよみがえる。

すると拙宅で開いた茶会の礼状が目にとまった。2003年9月、社中の皆様(師とS氏、N氏、I氏、K氏)を自宅に招いた折のものであった。前年に実家で茶名披露の茶事に招いた方々である。 

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 当時は和室のないマンションに暮らしていたため、皆様には厚手の絨毯の上に座布団を敷き、座卓を前にお座りいただいた。むろん床もなく時代の二月堂机を代用、軸は「喫茶去」、江戸時代高僧の筆、花入れは長年陶芸に勤しまれている社中の先輩S氏の作。以前に頂いた信楽の花入を使わせていただいたところ、大変喜んでくださった。

懐石を主にした薄茶一服の会であった。懐石とは言え、和洋折衷の自由な料理である旨、皆様には事前にお伝えし普段着でお越しいただくようお知らせした。和服姿しか存じあげなかった先輩方の洋服姿が懐かしく思い出される。

懐石のみで2時間余り、品数は多くお酒が大変に進んだ記憶がある。進肴は和え物、炊き合わせなど定番のほかに洋風な料理もお出しした。器は現代の作家もの、記録がみつからず献立を記せないのが残念である。

しかし、鮮明に覚えているのは煮物碗で、鴨丸のコンソメ仕立て、キノコと銀杏、根菜を合わせ、初秋の盛り付けを心掛けたものである。後日、師からあのような献立は洋室にふさわしく、煮物碗は大変に美味しかったとのお言葉を頂戴した。常日頃はおほめいただくことはなく少々驚いた。料理は残すことはできないが、書状は手元にあり記憶を新たにしてくれる。

 

懐石

 

薄茶