古染付漢詩文皿「トリ貝」

izaatsuyoshi2008-06-21


古陶磁に肴を盛り、杯を傾けながら、じっくりと旬の食材を味わう。週末恒例の楽しみである。

今週末は何を食そうかと、週の半ば、早くも丸赤の店頭に侍る。木曜には美しい甘鯛が横たわり買い物客を魅了していたが、残念ながら、本日(6/20)の仕入れはなかったようだ。そこで、本マグロの赤身とトリ貝を求めることにした。

「器は料理の着物である」とは、魯山人先生の弁。調理のプロセスには様々な楽しみがあるが、器に調和した盛付をする、当方にはまさにその瞬間が醍醐味であり、これぞという器と対峙すれば胸も高なる、というものだ。

厚手の古染付漢詩文皿に、トリ貝を盛る。

その身を一枚、一枚と食すうち、漢詩文が顔を出すという具合である。茶懐石向うに使うは、わずかに大きい寸法であるが、実に味わいのある器と言えよう。

今宵は、トリ貝の色味と染付の白い肌とのコントラストを楽しみたいという誘惑に負けたが、この皿には春の詩が書かれており、実のところ、今に使うは野暮というものであった。来春の茶懐石本番を期し、詩の全文もその折にご披露するとしよう。

さて、トリ貝のシコシコとした食感も良し、赤身の深い味わいはさらなりで、さすが丸赤、その名に恥じない美味さであった。丸赤さまさま、黄瀬戸六角に注がれた酒も大いにけっこう、漢詩文を読み解きながら、会話もはずむ宵である。