日乃出高坏菓子薹

実家にて

「日乃出高坏菓子薹」、正月には最適の器である。その名の通り台付で数センチほどの高さがある。

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丸い器を上から見れば、たなびく雲をも輝かせながら、今まさに顔を出した日乃出と見えよう。その昔の意匠に感服する。菓子は赤坂は塩野の「松の緑」。日本人が想起する元日の風景と見えればありがたい。

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さて、寄り付きにかけられた狩野伊川院の富士の図が年明けの目出度さを伝えていたが、亭主(妹)の意気込みも虚しく、コロナ感染拡大により、1月30日に予定していた茶事はまたもや延期となった。

画像はその2週間前、本番通りの道具を使っての予行練習、茶友を招いた折のものである。コロナ禍中にあり懐石は控え、白湯と茶、そして菓子が客の喉を通るものであった。

それでも薄茶の頃には、笑い声が絶えず、客、亭主とも楽しんでいる様子が襖越しに伝わってきた。

干菓子、亀屋伊織
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茶事をひと通り終えると、来たるべき日のために、妹は茶友の言葉に耳を傾けた。初披露となった客用の卓と椅子は申し分ないとのこと、茶事の流れに関して細やかな指摘があり、予行練習はそれなりに成果があったようである。

煎茶のお供は金柑。客3名、亭主、半東の5名分。反省会にて。
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客を送り出すと、妹は充実した一日であったと笑顔を見せた。半東を努めた妹の主人は、私を気遣ってか「周りを巻き混んで、贅沢なお遊びですよ」と苦笑した。

とは言え、延期となった本番のため、妹は精進を重ねていくのだろう。幼い時分の妹の顔を思い出しながら「また次回、お水屋さん、頑張るから」と声をかけた。