借りてきた猫を気取る

箱根にて

連れは右膝、私は五十肩に加え左膝を痛めてしまい、このところ温泉通いが続いている。ともに北アルプス縦走を楽しんでいた往時を懐かしく思うばかりである。

7月2日、新宿11時20分発のロマンスカーに乗り込み車内で弁当を開いた。到着後は13時30分より箱根湯本の見番にて「ふらっと芸者」を楽しみ、そのあと温泉を満喫するというスケジュール。

弁当の菜は、出汁巻き玉子、豚ロースの生姜焼きに甘長唐辛子添え、マッシュポテトと蛸ピーマン。そして絹サヤを散らした鶏肉と椎茸の炊き込みご飯に、ナメコと茗荷、葱の味噌汁。朝からの猛暑に、連れの好物を詰めたこの重箱を保冷バッグに入れたものである。


連れはスパークリングワインのフルボトルを抱えてきた。シャイを自称する連れによれば(信じるものはいないだろうが)芸者衆の芸を楽しむにはイッパイひっかけないとならないそうだ。車内では弁当をつつきながら、そんな連れの話が止まらない。本日も舌好調のようである。

さて「ふらっと芸者」を拝見するのは2回目、毎回3人の芸者衆が出演し客を楽しませてくれる。この日、立ち方は優穂姐さんと茶々姐さん、地方が小糸姐さんという面々。茶々姐さんは場の仕切役も務め、ユーモアあふれるトークに会場が沸いた。連れは客席の暗がりで借りてきた猫を気取る。

さて、温泉を出て、1時間ほどマッサージを受けた連れはなにやらブツブツ。マッサージ師は「愛想もへったくれもなかった」そうである。

まあ、誰にしろ芸者衆のおもてなしにかなうものはない。夕刻、蕎麦屋でイッパイ。連れの機嫌も上向きとなり、やれやれであった。