花のみちびき

izaatsuyoshi2010-02-01


陽気に誘われ、長谷寺への道を歩く。寺の門をくぐると、紅白の梅が満開であった。明日から2月、鎌倉はすっかり春の装いだ。うららかな陽射しに福寿草も咲き出した。寄り添うように咲く姿が愛らしい。

高徳院の大仏に参拝したのち、折りよく来たバスに飛び乗り駅までもどる。続いて段葛沿いの古美術商を覗いて歩いた。買いたいものがある訳ではないが、東京の美術商とは異なる雰囲気が楽しい。

3件目の店で、ある棗が目に留まった。蓋には豊かに咲き誇る花の高蒔絵。内側には美しい梨地に一定の間隔に切金が置かれさらなる趣をあたえている。魅せられた。また胴の下部から底にかけて豊かな花が二輪描かれている。珍しいことに、一輪は花の背面の姿であった。

花という主題ながら大胆な意匠である。好みものか、あるいは注文主の意向を受け作られたものか。店主は明治頃の作ではないかと言う。とにかく一目ぼれであった。迷わず頂戴する。

夕刻、連れが贔屓にしている中華料理店に入る。手ごろな値段で美味い料理を食べさせてくれる店だ。さてフロアスタッフに一人の青年がおり、先輩の厳しい指導にもめげず、色白の顔にはいつも笑みをたたえている。客には癒しを与えてくれる存在だ。連れは時折彼を呼び止め、からかいながらも気遣いの言葉をかける。「君がいるからここに来るんだ。頑張れよ!」 

この店の麻婆豆腐は花椒の香りが高い。紹興酒をロックにグラスを重ね、ほろ酔い気分で帰宅する。