心づくしの茶事

招かねば招かれなくなるのが茶事というもの。

私が茶事に熱中していたのは10年も前のことである。ある時から憑き物が落ちたようにやめてしまった。以来、2年余り前にお世話になった方(四名)を招き、簡略な茶事を開いたきりであり、茶事の招待を受けることも次第に無くなった。

2012-05-13

しかし10月の末、幾年かぶりに社中の友人からの招待を受けた。以前、恩師を正客に1度だけ彼女を茶事に招いたが、それが忘れられないのだと言う・・・光栄というべきか?

普段着でとの案内に、よく茶の稽古に着ていった葡萄色の着物に白地に刺繍のある紬の帯を選んだ。このところ、和服を着ておらず、着慣れたものをと思っての選択であったが、それでも着付けに1時間ほどかかってしまった。

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さて、彼女は客は3名までと決め、近年、茶事を一人で手がけているそうだ。マンションの一室に四畳半の茶室を設え、背伸びをせず自分らしい茶事を心がけているとのこと。しかし準備から当日の亭主役まで一人で行うのは、大変なことだ。

懐石は汁代え、三度の飯器の持ち出し、千鳥の杯まで抜けることがなかった。

  • 向う 鯛のコブ〆 菊花 若布
  • 汁椀 1.焼き茄子(紫蘇の実)2.里芋(芽紫蘇)
  • 煮物椀 海老真蒸 椎茸 青柚子
  • 焼物 鰆
  • 進肴 穴子、里芋、モロッコ隠元の炊き合わせ
  • 柿、蕪の胡麻酢和え
  • 八寸 烏賊松毬焼き、オクラ
  • 小吸物 梅干
  • 香の物 沢庵ほか
  • 湯桶
  • 菓子 阿佐ヶ谷うさぎ屋製 

青竹の取箸、後座を彩った竹花入はともに友人の手製だと言う。
続き薄で美味しいお茶をいただいた。薄茶の菓子は吹き寄せ、濃茶の菓子とも心を込めて選ばれたのだろう。

心づくしの茶事の御礼は、茶事に招くことが一番である。そろそろと道具組みから始めてみようか。