Z世代の優雅な休日 Ⅱ

実家にて

午前のひと時、雨があがり、母は昨夜宿泊した二人の女性を庭へと誘った。ウグイスが歌い、時折、キジがケンケンと鳴いている。

見たこともない草花に驚き、また「これは朝食で食べた蕗よ!」と言えば「えっ、これ、食べられるの? 初めて見た!」と都会育ちのお嬢さんたちとの会話は、母も楽しそうであった。

雨は再び降り始め、終日止みそうにない。当初、雑木林で計画していたBBQは、雨の予報にガレージで行うことにした。前日に掃除を済ませ、テーブルと椅子を運び込んである。

テーブルにクロスをかけ、皿やグラスをセッティングすると、ガレージはオシャレな設えに、心地よい空間になったように思う。

母屋玄関より食材の運びだしを頼むやいなや、撮影会が始まった。

ざるに並べた野菜を見ると「ジブリジブリ」と声を揃え、一時ジブリの話題に花が咲いた。ざるに盛られた野菜は「となりのトトロ」に登場するおばあちゃんの野菜を想起させたらしい。

 

炭に着火させることも彼らにとってはイベントのひとつとなった。小さな木片にガスバーナーで火を付けようとするがうまくいかず、結局、妹の主人が団扇であおぎながら炭に火を移した。

そして目出度く炭も熾り、野菜や肉の串巻きを網に乗せると、昼過ぎに到着した男性客がシャンパンのコルクを盛大に飛ばしてBBQがスタートした。

妹が奮発したブランド牛は言うまでもなくメイン食材で炭火焼きのステーキは最高に美味かったろうが、烏賊もなかなか好評であった。肝はアルミホイルで蒸し焼きにし、烏賊の身をつけながら食してもらった。

タンドリーチキンはフライパンで皮面をパリパリに焼き、仕上げに炭で炙り香ばしく焼き上げた。皮ごと焼いたそら豆もオススメ。

この間、妹夫婦が焼きを担当し、私は台所で下拵えをした。ざるに乗せて海老を運べば、これもまた「ジブリジブリ!」の声が上がった。

彼らと言えば、マシュマロを焼いたり、それぞれの近況をおもしろおかしく話し、笑い声は離れた母屋まで聞こえてきた。

牛と豚のロース、数種のウィンナー、チキン、烏賊、海老、野菜などなど、前日に買い出しした大量の食材はいつのまにか5人の腹におさまり姿を消した。

さすがにおなかがいっぱいで〆の焼そばは食べられないないだろうと思いつつ声をかけると食べたいと言う。当たり前のことだが、我々親世代とは身体が違う。

妹夫婦は乾杯のあとに場を離れる予定であったが、焼きを任され「うまく使われたよ!」と言いながらそれなりに会話を楽しんでいた様子である。

BBQ終了後は母屋で、コーヒータイムとなった。誕生日近い女性にサプライズでホールケーキを用意していたようだ。

現在は社会人として活躍する彼らだが、サークル仲間が集まればすぐさま学生時代へと戻ってしまう。しめて6時間、飲んで食べて話し笑い続けたその体力、そして我々を含めて場を盛り上げようとする心遣いを頼もしく感じたものだ。

さて、やはり実家は珍しかったようである。おじいちゃん、おばあちゃんが庭を手入れする「丁寧な暮らし」「日本の古き良き家庭のカタチ」との感想。そして何より楽しんでいただいたことにホスト役の我々も満足した2日間であった。