体力を回復する方法

八重洲 鰻 はし本にて

「足が痛いんだ。そんなに早く歩くなよ。」と背後から連れの声が聞こえてきた。

「もうすぐ治る、去年もそうだった。」と言いながら3か月余り、先週末にやっと整形外科で見てもらったが、これと言った原因は見当たらないという。かつての山男もかたなしだ。

「前かがみになってるぞ!」と再びの声。以前は早足で歩く連れに付いていくため私は前のめりで歩いたものだ。その癖が抜けない。

歩みを止め横に並んだ私に「はし本、行くか?」と連れが言った。

退職して第二の人生を歩み出す年代の私たちだが職種は違えど仕事量は変わらず、私の場合、むしろ抱えるプロジェクト数は増えている。鰻で体力回復が図れるならありがたい。

さて東京駅近くの鰻屋「はし本」が建て替えのため別の場所に移転してから、かつてのように足を運ばなくなった。取り壊しとなった仕舞屋の風情を懐かしく思う。

最近は銀座の「竹葉亭」が贔屓となった。それぞれに良さがあるが、酒呑みにはツマミの多い「竹葉亭」が適しているのかもしれない。

さて後日のこと。「はし本」のテーブル席で馴染みのスタッフと軽口を交わしながら、まずは瓶ビールに板わさ、川海老の唐揚げを頼む。

「川海老の足やヒゲか刺さるんだ、僕は口の中まで繊細だからね!」・・・だったら注文するな!と言いたいところだ。小さな川海老の足とヒゲをとって連れの皿に渡しながら、これはやはり美味いと思う。

酒は冷酒に変わり、ツマミは貝柱のぬたと鰻の串焼くりからを注文する。

ほどほどに酔もまわった頃、鰻重と肝吸いをひとつ。「い・ろ・は」とある鰻重の真ん中のサイズ「ろ」を二人でいただく。これでおなかはいっぱいである。

 

毎週末に実家に帰る私は連れと温泉に行く時間も減ってしまった。夏には秘湯でゆっくり過ごしたいものである。