花冷えが続き、桜花命を長らえている。今宵は寿司屋で一献。
早く出でる可し!との連れの誘いに、いそいそ現地にいってみればそこは長蛇の列。安くて美味いと評判の○○○寿司のこと、さして驚きもしないのだが、さて当の本人は何処かと探してみれば、植木囲いの石段にチョコリと座り、悠々とビールを呑んでいるではないか。
まあ、これが数寄人たる所以ではあるのだが…。対酌を求められれば断る理由もなし、ほどなくともに顔は赤く染まり、今宵の宴はすでに繚乱。
おっと、ようやく順番も回ってきたようだ、我らの酔いが先に回らなくて良かったなア〜、などと冗談を言いながら案内された席は嬉しくもカウンター。上々である。
いきなり冷酒を注文し、ほろ酔い加減もよろしく、まずは寿司屋に敬意を評して一句。つまみは初鰹に赤貝である。
- 「○○○寿司 春を肴に グラス空け」(敦煌)
- 「○○○寿司 春の肴に ほだされて」(絵空人)
ここで絵空人、肴にほだされ重ねて冷酒を所望、更にはカバンから斑唐津と象嵌青磁の盃を取り出した。敦煌、盃をあけて一句。
- 「いにしえの 器と語る 春の宵」
先週、目利きの古美術商と飲んだ絵空人の詠める。
- 「京橋の寿司○○美味しと彼は謂い ともの酒盃の為せる業哉」
まこと、この2つの器は逸品である。青磁は見込みに繊細な陰刻があり、外側にはぐるりと象嵌の花。今宵はこの盃を撫でつつ、いにしえの花を楽しむ。
とり貝のにぎりをほお張り、酔いも大分まわった絵空人の一句。
- 「花に酔い 器に酔いし 春の宵」
以上、昨夜、酔いにまかせ箸袋に記したものである。