9月の花

拙宅にて 2度目のワクチン接種を終え、久しぶりに実家に帰った。前回の帰省からこの方、父が足に怪我を負い、母の物忘れが目立つようになったとの妹の電話に、老夫婦の生活に危うさを感じないわけにはいかなかった。それでも庭仕事は楽しいようであった。秋…

七夕飾り

拙宅にて 善福寺川緑地にほど近い住宅地に越して、ひと月半余が経った。二度の引越しに関わる煩わしさから開放されると、いつの間にか七夕を迎える時節である。思い出すのはこの春まで暮らした家の庭。一隅に生える笹竹を切って七夕飾りを作り、軒先や室内に…

ムシカリ

実家にて 2021年を迎えて、早くも3ヶ月が経過した。梅花を送り、今や枝には小さな実が鈴なりである。近隣の桜花は、盛大に花弁を散らし、あるものはすでに葉桜の体。さて、緊急事態宣言が解除され、久しぶりに帰郷した。両親は「そんなに長く帰らなかったの…

梅花散る

拙宅にて 満月に匂う

梅花咲く

拙宅にて このところの陽気に、我が庭の遅咲きの梅が一気に開花した。早朝に窓を開けると、開花2日目にして、はらはらと花弁が散っている。見上げれば、ちょんちょんと枝を飛び移る花喰鳥一羽。目白である。梅花のもと、清々しい心地で庭を掃く。緊急事態宣…

紅葉の庭を歩く

実家にて 今年も5人の茶友が紅葉狩りにやってきた。コロナ禍のため、昼食のもてなしは諦め、午後一時半の集合とした。両親はこの日のため入念に庭を整え、当方は母や妹とともに昼食に代わる土産の用意に勤しんだ。土産は母の得意料理、セイロで蒸し上げた栗…

野の花

実家にて 4連休の初日、幾月か振りで帰郷した。老齢の両親は顔色もよく安心したものである。両親が丹精した朝顔と夕顔は彼岸の大気のなかでまだ花を付けていた。毎年、お盆休みには朝顔鑑賞会と称して、早朝の庭でおめざをいただくのが楽しみのひとつである…

玉紫陽花

実家にて 今夏は実家に帰らなかった。百日紅、夏水仙、女郎花、我亦紅、朝顔、そして夕顔…庭は数々の花に彩られているだろう。 そろそろツクツクボウシも鳴き始める頃か、玉紫陽花の花が開いたと妹から画像が届く。

正午の茶事

実家にて:2003(平成15)年11月24日 植物好きの両親は庭の手入れに余念がない。5月の連休には必ず訪れる茶友たちに、草木をお分けすることは母の大きな楽しみである。 実家の、入母屋造り総二階建ての母屋は明治末に建てられたもので、1975(昭和50)年に元の…

見えない富士

十国峠から箱根湯本へ 「十国峠に行かないか? 一度も登ったことがないんだ。函南ゴルフ倶楽部から見えるんだよ」と連れが言った。 十国峠は、孤高の画家 金山平三がこの地より極寒の富士を描き、太宰治が『富嶽百景』に取り上げた富士山の展望拠点として知…

愛すべき庭

拙宅にて この家に移り住んで、はや数年が経った。不要不急の外出が制限されている昨今、庭の緑や隣接する公園の緑に癒される日々である。2月下旬に遅咲きの梅が咲き、4月に入れば柔らかい紅葉の若葉が萌え始める。6月には梅の実が鈴なりとなり、梅仕事を楽…

梅花咲く❗

我が家の梅は遅咲きである。されども今年は暖冬で例年よりはるかに早い。咲き始めから蕾のままで落花しているのは小鳥たちの仕業である。昨日は、ひよどりが細い枝先にとまり蜜を吸い花を散らすのを、飽きず眺めた。

梅花咲く❗

2年に一度、豊作となる我が家の梅。初夏には沢山の実をつけるだろう。先日のこと、近所のご婦人が、「こんな大きな梅の木は、東京ではみかけなくなったわね、見るだけで嬉しいわ」と声をかけてくれた。今朝は目白のつがいが花をついばみに来ている。カメラ…

ここはどこ?

9月9日、久しぶりに箱根に足を運んだ。海外からの旅行者で街はいっぱいだ。なじみのホテルで湯に浸かり、ステーキを食べ、そして鯉の餌やりが定石。さて、いつものように池を前に餌をまいていると、後ろからシャッター音が聞こえてきた。振り向くと鯉の様子…

猫、参謀となる

箱根には2ヶ月に一度ほども通っているだろうか。このところは広大な池が広がる旧岩崎家庭園に立つホテルを訪れている。なにしろこの池には幾百もの鯉が生息しており、連れは彼らに餌をやるのが何よりの楽しみなのである。温泉を出てテレビで女子ゴルフを観戦…

庭を見る

連れの所要に便乗し、猛暑のなか京都に出かける。「白沙村荘 橋本関雪記念館」を初めて訪れる。ここは京都画壇の一時代を築いた画家、橋本関雪の理想郷である。関雪は終生、作庭を楽しみ、また古美術を愛し収集した。東山大文字を借景にした庭園には、平安か…

遅咲きの梅

昨秋、伸び放題であった庭先の梅の徒長枝を大々的に剪定した。 花数は少ないが今年も初々しい花を咲かせてくれた。 本格的な春の訪れとともにこの梅は開花、道行く人はしばし足を止めて憩う。

梅が結ぶ縁

梅の収穫の頃となった。先週末、連れは生け垣を越えて成長した枝を剪定し、私は切り落とされたばかりの枝から梅の実をもいだ。昨年は不作であったが、今年は枝ごとに実は鈴なりである。この日の梅はまだ青く、梅酒に最適であった。拙宅だけでは処理しきれず…

箱根にて

久し振りに連れと日帰り旅に出た。行き先は箱根、これがあいも変わらずの珍道中。それではこぼれ話を少々。早朝から連れは仕事があり、新宿で待ち合わせとなった。さて9時40分発のロマンスカーの出発までは10分ちょっと、私は席を目指すも、連れはホー…

観梅

槍梅や曇天突きてこぼるるうらら(敦煌)

槍梅

拙宅の遅咲きの梅が見頃を迎えた。半月ほど前の嵐で、まだまだ硬く小さかった蕾が沢山落ちてしまい、今年の花はいかばかりかと思っていたが、日毎、花喰い鳥たちが訪れるにぎやかさ。変わらず目を楽しませている。昨夜から降り続く雨に花弁が舞った。春本番…

花を分ける

4月にはいると、実家の庭では樹木の移植が本格的に始まる。冬の間、父は庭を眺め剪定をしながら、あれはそちらに、これはあそこにと終わりのない構想を練っているらしい。今年一番の大仕事は東南の袖垣を撤去し、大きな皐月二株を移植することであった。な…

花喰い鳥

庭先の梅が満開となった。蜜を目当てに野鳥たちがせわしく訪れる。大きく枝を揺らすのはヒヨドリ、枝枝を飛び踊るのは目白の番いである。カメラを向ければ飛び去ってしまう野鳥たち。目白踊り梅花密かに匂いたつ(敦煌)

梅とバルテュス

気掛かりな仕事から解放され、2ヶ月ぶりに晴れ晴れとした心持で迎えた土曜日。早朝4時半に脚立を抱えて庭に出た。さて、黄色く色づいた梅の実を収穫するとしよう。 まずは肩から袋を袈裟にかけ、脚立に登る。そして手の届く限りの実へと腕を伸ばす…お次は脚…

ドクダミの花

曇天の早朝、窓を開けると庭の一隅がぽうっと明るい。ドクダミの花が満開である。昨夜の雨に打たれ、葉はツヤツヤと輝き、清楚な白い花が一斉にほころんでいる。 この花はこんなにも美しかったろうか。子供の頃は、ドクダミという名称も何やら恐ろしく、美し…

青梅

4月21日、住み慣れた町を離れ、隣町に居を移した。新居の玄関先の小さな庭には、いくつかの石が据えられ、槇、紅葉、南天、梅の木などが植栽されている。仲介業者とともにこの家を最初に訪れた日、梅の花はすでに散っていたが、見上げれば赤い萼片が雌蕊を縁…

松尾大社

京都最古の神社として知られる松尾大社。洛西総氏神とともに醸造祖神が祭られている。神輿庫の軒下には、全国の酒造家から奉献された酒樽が5段重ねにびっしりと並び、なかなか壮観であった。またこの神社には、昭和を代表する作庭家の一人、重森三玲の庭(昭…

大河内山荘

「あの庭はいい、大したもんだよ、大河内傳次郎って俳優は!」と、連れはしみじみと語ったものだ。以来、私の頭の中では小倉山の斜面にあるというその山荘のイメージがふくらみ続けた。ある日のこと、「京都に行くぞ!」と連れが言った。そうして向かったの…

東寺

4月2日、余震の続く関東から京都に旅立った。新幹線の車窓からは変わらず雄々しい富士が見える。映り往く景色…木々の芽木灯が春本番を予見する。早足の連れとともに、京都駅から東寺への道を黙々と歩く。立体曼荼羅に諸尊が配置された東寺の講堂。国宝指定の…

落ち葉の行方

小春日和の一日を、庭仕事に「うつつをぬかす」ことにした。金曜の大風は、枝々の紅葉をほとんどさらってしまい、地面を色とりどりに染めている。落ち葉を掃き集め、リヤカーでとある場所へと運び入れる。あとは豊かな腐葉土に、時が仕上げてくれるのを待つ…