書籍

『猫を抱いて象と泳ぐ』小川洋子

猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)作者: 小川洋子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2011/07/08メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 27回この商品を含むブログ (36件) を見る 主人公の少年、そして彼を愛する人々、それぞれの汚れなき思いが胸をせつなくする1冊…

白洲正子 1998年夏鼎談「芸術新潮」

暑さ去りゆく9月半ば、古書店にて求めた6冊。いつもながら脈絡のない選択である。 『妊娠カレンダー』小川洋子(文春文庫) 『三月は深き紅の淵を』恩田陸(講談社文庫) 『王家の風日』宮城野昌光(文藝春秋) 『華の碑文 』杉本苑子(中公文庫) 『秘密の友人』ア…

『貴婦人Aの蘇生』小川洋子 

貴婦人Aの蘇生 (朝日文庫)作者: 小川洋子出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: 2005/12/01メディア: 文庫 クリック: 3回この商品を含むブログ (49件) を見る 『貴婦人Aの蘇生』再読。 剥製のコレクターであった夫を亡くした老女ユーリをめぐり、彼女と同居す…

『香水 ある人殺しの物語』パトリック・ジュースキント(文春文庫)

香水―ある人殺しの物語 (文春文庫)作者: パトリックジュースキント,Patrick S¨uskind,池内紀出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2003/06/01メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 36回この商品を含むブログ (160件) を見る1985年にドイツで発表された『香水 ある…

『ハルイン修道士の告白』エリス・ピータース

修道士カドフェルシリーズ15『ハルイン修道士の告白』(教養文庫)を読む。ハルイン修道士の告白 (現代教養文庫―ミステリ・ボックス)作者: エリスピーターズ,Ellis Peters,岡本浜江出版社/メーカー: 社会思想社発売日: 1994/03/01メディア: 文庫この商品を含む…

『月下上海』山口恵以子

月下上海作者: 山口恵以子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/06/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見る『月下上海』山口恵以子(文藝春秋)を読む。 戦前の上海に興味のあった当方、ある人の勧めで手にとった次第だ。さて、帯に踊る文字…

「福本章 二都物語 プロヴァンスからヴェネツィアまで」

イタリア文化会館にて「福本章 二都物語 ヴェネツィアの光展」(5月24日-6月22日)が開催中である。福本章は1932年岡山に生まれ、芸大では林武教室に学んだ。1967年画家の登竜門「昭和会展」で昭和会賞を受賞し、同年ヨーロッパに渡っている。以降、フランス…

花見の宴(井の頭恩賜公園)

敷島の 大和心を 人問はば 朝日に匂ふ 山桜花戦前に国威高揚の一端を担わされ広く知られるようになった本居宣長の歌。私にとっては小林秀雄の講演テープ(新潮カセット文庫)で耳に馴染んだ歌だ。壇上の小林は、声高らかに読み上げたものである。問題山積の…

読書の時間(小説)

昨年末からの蔵書の整理。古書店に持ち込んだり、廃棄したりもしているが増えていくことは必須だ。興味のある画集や図録は頻繁に眺めるが、一般書籍や文庫本は一度読んだが最期、あるものにいたっては横積みにされ、引き出されることもない。内容はもとより…

読書の時間(コミック)

先週末、甥が「すっごい面白いよ!」と勧めてくれた『宇宙兄弟』小川宙哉(モーニングKC)。貸してくれた18巻を二夜で読みきった。幼い日から宇宙へ行くことを志した兄弟の壮大な夢、悩みや挫折、そして達成感を読者は共有する。ページをめくる指が止まら…

静波海岸 スイングビーチ

連れはいまだ膝の痛みが消えず、ゴルフも山行もままならない。そこで週末は海を見ながらゆっくりと過ごすことにした。静岡県の海沿いの町牧之原市。「東急ハーヴェストクラブ静波海岸 スィングビーチ」を予約したが、多忙な連れは片付けなくてはならない仕事…

井上靖『夏草冬濤』

夏草冬濤 (上) (新潮文庫)作者: 井上靖出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1989/06/09メディア: 文庫 クリック: 11回この商品を含むブログ (12件) を見る ご存知『しろばんば』に続く井上靖の自伝的小説。井上は成人してから親しんだ作家であるが、『夏草冬濤…

A・S・バイアット『抱擁』

抱擁 (1)作者: A・S・バイアット,太原千佳子,栗原行雄出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1996/04メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る 久しぶりに読みごたえのある小説に出逢った。『抱擁』”Possession: A Romance”(新潮文庫)は…

『誰か Somebody 』 宮部みゆき

2012年の最初の3連休は、静岡県牧之原市に旅することになった。例によって、相良のお気に入りの書店を訪ね、『誰か Somebody 』(宮部みゆき著/文春文庫)を購入する。昨年末にこの書店で手にした『名もなき毒』のシリーズ前作にあたるものだ。主人公は大財…

『名もなき毒』宮部みゆき

12月23日、静岡県牧之原市相良町に赴く。相良は、暑さも盛りの7月に訪れた美しい海辺の町だ。 連れが所要を済ませる間、町の小さな本屋をのぞいた。客の姿のない店内も、女主人の穏やかな笑顔も以前と変わらない。私は昨夏の訪問をなぞるように一冊の本を購…

『賢者の贈り物』 オー・ヘンリー

誕生日のプレゼントは、真珠のイヤリングだった。連れは真珠の色をよくよく見比べ選んでくれたらしい。大玉の真珠は手のひらに重く、穏やかに輝いている。ありがとう。とっても嬉しい。しかし、落としそうで普段使うには躊躇してしまう。6日前は、連れの誕生…

相良の海岸 二つの選択

静岡県牧之原市相良町に所要のある連れとともに、東京駅8時3分発のひかりに乗り込んだ。静岡駅から相良までは、バスで約1時間の道程である。連れが所要を済ませる間、町の小さな本屋をのぞいた。店主は高齢ながら愛想の良い女性で、何か1冊、買って帰りたい…

『冬のかたみに』立原正秋

「立原」が2月いっぱいで休業すると聞いたのは、昨年師走のことである。私たちは驚き、絶句したものだ。「私の料理は古いのかもしれない」 立原氏のつぶやきが耳に残る。果たして、素材の美味さを最大限に引き出す料理は、刺激的な味覚を求めがちな現代人に…

墨宝 常盤山文庫名品展

根津美術館が華々しくリニューアルオープンしたのは2009年秋のことだ。美術番組や専門誌でも大きく取り上げられ、その喧騒が落ち着いてから訪ねようと思っていたのだが、いつのまにか1年以上が経ってしまっていた。しかし、ままならないものである。本日は庭…

花の女 フランソワーズ・ジロー マティス、ピカソとともに

日曜美術館「ピカソを捨てた花の女 かっての恋人が語る巨匠の姿」(23日放送)を見る。画家フランソワーズ・ジローはナチス占領下のパリでピカソと出会い恋人となった女性だ。ピカソとの関係は10年におよび、二人の子どもをもうけている。娘はジュエリー・デ…

フィクションの功績とは?『利休にたずねよ』山本兼一

某数寄者曰く、歴史小説は求めども時代小説をたずねず。また某美術評論家曰く、フィクションに面白さを知らずと。昨今、話題の小説『利休にたずねよ』を読む。茶の湯初心者、日本文化に漠然とした憧憬を抱く人々の興味を、大いにそそる内容だろう。しかし、…

灰色の空

8時52分のMAXとき311号で東京駅を発つ。高岡付近では、車窓より妙義の奇怪な姿を遠望し、消化不良に終わったこの秋の山行を思い出した。2時間ほどで長岡に到着する。山本五十六を排出した長岡は、戦災で町の大半を焼失した。市街地に戦災記念館があるのも…

藤田嗣治 作品をひらく

藤田嗣治の歿後40年を迎え、各地で藤田関連の展覧会が開催されている昨今、林洋子氏著 『藤田嗣治 作品をひらく 旅・手仕事・日本』(名古屋大学出版会)のサントリー学芸賞受賞が報じられた(11/14)。藤田嗣治、この時代に翻弄された画家は、82年の生涯に膨…

草木ノート

宇都宮貞子著『草木ノート』1970年 読売新聞社松本市内の古書店、慶林堂にて母の土産に求む。宇都宮は1908年、長野に生まれ、植物に関するエッセイを数多く著している。長年にわたって、草木にまつわる文を綴っている母は、興味をもって読んでくれると思…

マリオ・プラーツ

古書店にて求む。 マリオ・プラーツ著 『肉体と死と悪魔 ロマンティック・アゴニー』1986年 イ・ミョンオク著 『ファム・ファタル 妖婦伝』2008年 山本七平著 『聖書の旅』1991年

五十音の縁

新緑に輝く5月、連休明けの楽しみは、遠方の友人Kに誕生日祝いを選ぶことだ。勘が冴え、喜んでもらえるだろう一品が、すぐに決まることもあれば、あれこれと迷うときもある。今年は後者の方であったが、昨日メールがあり、どうやら気に入ってもらえたようで…

寿福千年録

『千夜一夜物語』は、一夜のうちに遠くアラビアの国へと、連れて行ってくれた。学生時代の夏休みに徹夜を重ね、この長い長い物語を読み終えた記憶がある。空が白々と明るみはじめるころ、カナカナと蜩が鳴いた。もう遥か昔のことだ。残酷な王、空飛ぶ絨毯、…