懐石

一客一亭の茶事

茶の湯の稽古を辞してから10年余りが経った。今や、和服の着付けは多分に時間がかかり、正座をすれば足がしびれ、点前となれば足がふらつく・・・ここに至っては、自覚も新たに自主錬を開始。何故ならやがて訪れる老後の楽しみのひとつは茶事であるのだから…

山上の茶事(六)

転んで福? 鎌倉の数寄者、居合仲間を招いての新春恒例の茶事、本年も水屋に侍ることとなった。客は10名以内と聞いていたが、それを超えての大人数となり、各々が持参した大量のアルコールが水屋の一隅を飾った。一方、昨年は出しきれないほどあった客の持ち…

結城紬

猛暑の夏、連れは雪渓の残る鹿島槍に行こうと言う。それが無理でも爺ヶ岳までは行けるだろう、そこで剣を眺めながら美味いコーヒーを飲もうよ、と誘う。山はすっぱりとやめたつもりであるが、このルートからの剣岳の眺望を思うと心が騒いだ。しかし復帰を目…

広島 太田川の鮎

鮎を楽しみにろばたに出かけた。一昨日の昼、Y氏に同道して銀座・吉野で鮎を食したことを連れに話すと、こちらの言葉が終わらないうちに「その鮎恐い顔してたか? 養殖だろ!」と返ってきた。「天然の鮎は勇ましくて恐い顔をしている」とは連れの持論だが、…

花見の茶事

実家にて4月5日、桜を追っての茶事は実妹が亭主を務め、客は茶友のご婦人方。桜尽くしの道具組は綺麗綺麗の趣きである。水屋は亭主の夫君が担い、当方はいつものごとく懐石を請け負った。床飾りは百人一首から花に寄せた歌を選び、札を盆に並べた。こうして…

睦月の道楽

2015年1月も終わる。中旬には風邪をひき、家でネットの無料映画を何本か見てすごした。普段見ることもないジョージ・クルーニーの主演作『ラストターゲット』であったり、アメリカの青春もの『シンデレラ・ストーリー』であったり、FBI捜査官のコメディー『…

山上の茶事(五)

正月 祝いの膳 鎌倉の数寄者、居合仲間を招いての正月の茶事。客は7名、それぞれ持ち寄る料理や食材もあると聞き、当方の用意は御節と雑煮で良いとのこと。それだけなら手慣れたものと、軽い気持ちで引き受けた。席入りは11時半。亭主はまず酒盃と向う代わり…

心づくしの茶事

招かねば招かれなくなるのが茶事というもの。私が茶事に熱中していたのは10年も前のことである。ある時から憑き物が落ちたようにやめてしまった。以来、2年余り前にお世話になった方(四名)を招き、簡略な茶事を開いたきりであり、茶事の招待を受けることも…

山上の茶事(四)

鎌倉は山上に茶室を構える某数寄者の恒例の茶事、毎年初冬から春にかけて開かれるが、今年は諸事情から2ヶ月以上も早い9月21日に行うこととなった。懐石を依頼された当方は、近年9月に手がけた記憶がなく、一週間前から食材売り場を見て歩き、献立を決めたの…

冬瓜の餡かけ

日本列島に台風が近づき、三連休の初日は夏に戻ったような暑い一日となった。この週末はどこへも出かけずのんびり、ゆっくりと過ごすことにした。というわけで、丸赤で千葉県産のまこがれいを購入し、三連休は贅沢な昼食からスタートである。白く美しいかれ…

青森県産 天然ヒラメ

小田急新宿の地下食品店街に立ち寄る。時折、ここの鮮魚売場では天然魚のお買い得品が登場するのだ!さてこの日のお買得品は?・・・なになに?!青森県産天然ヒラメが二柵で1000円!信じられない!!大漁だったの?!何にせよ当家にとってはこの上のない幸…

新緑に薄茶一服

近年、ご縁をいただいた年長のお二人を招いて、薄茶を一服差し上げることになった。それぞれご友人をお一人伴われていらっしゃる。当日は晴天、場所は新緑も清々しい春風萬里荘「夢境庵」(茨城県笠間市)。裏千家の茶室「又隠」を手本に北大路魯山人(1883−…

広島・太田川の鮎

銀座・ろばたにて鮎を食べる。今宵の鮎は広島太田川上流の鮎と聞く。小振りな鮎は癖がなく、非常に美味かった。酒は八海山。じゅんさいの山葵酢、隠元、茄子の胡麻和えを肴に、連れと盃を交わした。梅雨明けも近い。

木曽川水系の鮎

2週連続で美味い鮎を食べることになった。先月、連れは銀座ろばた(呂者堂)を訪れた折に、鮎が入ったら電話してくれるよう主人に頼んでいたのだ。ろばたは昨年来、月に一度は訪れているお気に入りの店である。フロアには囲炉裏のある大きなテーブルがあり、…

苦手料理

午後7時半、吉兆での夕食、これだけは天候に関係なく予定通りだ。連れは古唐津と粉引双耳盃、ジョッキ代わりに織部松皮菱筒向を携えてきていた。入り口で馴染みのマネージャーと軽口を交わし、席に着いてすぐにビールを頼んだ。今回はいつものように山行後の…

『冬のかたみに』立原正秋

「立原」が2月いっぱいで休業すると聞いたのは、昨年師走のことである。私たちは驚き、絶句したものだ。「私の料理は古いのかもしれない」 立原氏のつぶやきが耳に残る。果たして、素材の美味さを最大限に引き出す料理は、刺激的な味覚を求めがちな現代人に…

古染付松竹梅皿

大寒を迎え、鍋がますます美味い季節となった。本日(22日)はゆるりと牡蠣鍋といこう。具材は牡蠣、鱈、春菊、白滝、焼き豆腐。出汁は昆布でとる。薄口醤油とみりん、酒で薄味をつけ、仕上げに大根下ろし。鍋の中は、春菊の緑が彩るだけのシンプルなものだ…

睦月の道楽(2011)

1月1日早朝の恒例、実家2階の東側の窓から初日の出を拝む。今年一年、皆が無事で過ごせますように。大晦日の夜までかけて仕上げた御節料理に御屠蘇と雑煮。元旦の朝、家族で正月の膳を囲むと何故か晴れ晴れとした心地になる。書院床には恵比寿の軸、鏡餅、南…

香箱蟹を食べる

先日の鎌倉の茶事に差し入れをいただいた料理屋「ろばた(呂者堂)」を訪ねる。店内には大きな囲炉裏のテーブルがあり、それを囲んで10脚ほどの椅子が並ぶ。炉内には備長炭が赤々と燃え、自在に鉄瓶がかかっている。東京銀座に存在するふるさとといった風情…

師走の立原

久しぶりに立原を訪ねる。昔から変わることのない野菜中心の優しい料理だ。献立 口取 しんとり菜となめこの煮びたし 椀 白子の擦り流し 向附 平目昆布〆・生海苔・葱・山葵・酢橘 煮物 牛蒡・人参・大根・里芋・蓮根・椎茸・隠元・柚子 凌ぎ チラシ寿司 焼物…

山上の茶事(参)

師走 茶懐石献立 鎌倉は山上の茶事。正客は室町より続く名家の当主、連客は5人。紅葉いまだ残る木立の下、客は息を切らせつつ石段を上がり、茶室に到着したものだ。さて、その頃水屋では、懐石担当の当方、最期の仕上げに必死になっている。亭主所蔵の古陶磁…

食道楽

このところ、週末は湯河原で過ごすことが多くなった。先週末は鎌倉の料理屋「まき」で舌鼓をうち、翌日湯河原に向い、とろりとした湯で日頃の疲れを癒した。「まき」には、以前から話をしていた自家産の味噌を持参した。まずは店の主人に味見をしてもらう。…

心地よいもの 美味いもの

針ノ木から扇沢へ降りた我々は、生ビールにつられて黒四ダムの観光客で賑わうレストランに入った。軽く食事をとり、2時すぎにホテルに到着する。15分ほどとは言え、大柄の女性を背負って雪渓を登った連れの足の筋肉痛は大変なものであるらしく、すぐに温泉に…

雨を観る 山を観る

久しぶりに鎌倉の料理屋「まき」に足を運んだ。お通しは枝豆と鰊の甘露煮。鰊はどうも好きになれず、甘露煮も苦手である。これは連れも同様だが、残してはまきさんに申し訳ないと、連れの分まで飲み込んだ。しかし枝豆の塩加減は絶妙。鰹を頼む。ふた月ほど…

鎌倉彫重箱

東京の桜もついに開花した。鎌倉彫の二段重箱に弁当を用意していたが、思わぬ寒さに花見を断念。そこで江戸末期の絵師による「月下に山桜」の軸を掛け、屋内花見と洒落込んだ。口切の菜は筍、蕗の炊き合わせだ。春の香りに酒もすすんだものである。

一汁三菜の心がけ

旬のもの、食べたいものは飽きるまで毎日でも、という人も多い。そこで思い当たる当方、朝食を主に、一週間の食生活を検証してみた。一汁三菜を心がけている朝食。今週は半月前まで主菜の座に君臨していた焼魚が姿を消している。雪もちらつく寒い日が続いた…

睦月の道楽

早いもので2010年の1月も終わり。瞬く間に過ぎ行く月日を実感する。さて今月、特筆すべきことは…。8日午後、釜をかけていると案内のあった老舗古美術商を訪ねる。柿色無地の着物に、プラチナ地に大きな鱗文様の袋帯、帯揚げ帯締めは若草色と、正月気分さめや…

正月の宴

正月3日、例年のごとく茶友を招いた。前日に道具を組み花を決めると、すっかり安心してしまい、当日は刻限間際になってあたふたする始末。客の到着30分前にようよう着物に着替えたものだ。客は茶の湯を楽しみながらも真面目に取り組んでいる6名。こちらはこ…

山上の茶事(弐)

11月末の土曜、鎌倉は某数寄者宅で茶事が開かれた。山上にある茶室周りのモミジの色づきはまだ浅いが、そこかしこの広葉樹は賑やかに色づいている。亭主と客の5人はいずれも男性。席入りは12時半、懐石ののち中立ちがあり、続く後座は濃茶、後炭、薄茶の流れ…

美味い店 立原

久しぶりに立原へ行く。古備前徳利を携えて、立原さんと盃を交わそうという連れであったが、残念ながら朝からの雨に断念。美術品の運搬は、傘で手のふさがる雨の日はさけたいものだ。しかし石盃だけは忘れずに、気に入りの斑唐津と黄瀬戸六角を持ち込んだ。…